イメージング計測を用いたプラズマ乱流のメゾスケール構造の解析

目的

プラズマの揺動の情報を含んだ可視光の放射イメージの解析からプラズマの揺動の性質を調べる。PANTAプラズマからの可視光の放射を高速度カメラで計測したデータを解析対象とする。

実験結果の例

図1(A)に示すようにPANTAプラズマのエンドプレート側から高速度カメラでプラズマを観測した。図1(B)に画像の例を示すが、中央部の明部に複雑な揺動が観測されている。図中の赤線で示す明部を対象に解析を行った。図の白線は64pinプローブアレイとの相互相関係数の等高線図であり、高速度カメラの明暗情報がかなり局在化しており、密度揺動の空間構造、特に低いモード数の揺動を推定するのに十分であると考えられる。

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図1 (A)高速度カメラによる計測の概念図。(B)計測した画像の例と、64pin静電プローブのイオン飽和電流信号との相互相関係数の等高線(白線)を示す。

画像明部の画素の強度g(r, )を以下に示すようなFourier-Bessel展開[1]を行う。 panta_eq1

各項が互いに直交していることからa, bは容易に決めることができる。ここでz = a + ibという複素振幅を考えれば、z(r, m)は半径r, 小円周方向のモード数mの波の振幅と位相情報を含む。このzの時間に対するフーリエ変換 panta_eq2

を行えば、s(r, ω) として回転スペクトルが定義できる。回転スペクトルを図2に示す。ブロードなスペクトルの中にコヒーレンとなモード(周波数f1, f2, ‥‥)の鋭いピークが見える。m=1のモードがコア部でも振幅が大きいのに対して、m=2, 3 のモードは周辺部で振幅が大きいことがわかる。この周辺部のスペクトルの様子は静電プローブアレイのデータから求めたスペクトルとよく対応している(図3)。

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図2 m=1, 2, 3の各モードの回転スペクトルを示す。

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図3 静電プローブアレイにより求めたイオン飽和電流の揺動成分のスペクトラム

スペクトルの多数のピークをに対応するモード間の非線形結合を調べるためにbiphase解析を行った。データをフーリエベッセル展開で解析しているため、任意時間でのモードの位相を求めることができる。二つの波の位相差の時間変化を追跡すると、位相差が最も良く一定値になるのは次の二つの波の場合であった。モードA(m1=1, 周波数F2)モードB(m2=2、周波数F4~2xF2)。この二つの波は、m2 = m1+ m1、F4 = F2 + F2という条件を見たいしている。二つの波の位相を図4(A)に示す。塗りつぶした時間帯で位相がロックしていることがわかる。位相差を図4(B)、モードBの振幅を図4(C)に示す。ロックしている時間帯に大きな振幅が得られることからモードAの2倍高調波として、モードBが生成されている可能性がある。 残念ながらこのデータセットからはこれまでの文献で報告されていた[3]、周波数F1の波との相互作用は検知できなかった。これが、今回報告した手法の問題なのか、実際に非線形結合が小さいのかを今後プローブデータの詳細な解析から判断し、もし非線形結合が弱い場合には、より結合度の高い放電のデータを解析することで手法の有効性を実証していきたいと考えている。

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図4 (A)モードAの2倍波の位相(黒線)、モードBの位相(赤線)の時間変化、(B)(A)で位相の差の時間変化、(C)モードBの振幅

[1] Y. Nagayama, J. Appl. Phys. 62, 2702 (1987).

[2].J. Gonella, Deep Sea Research and Oceanographic Abstracts, 19, 833 (1972).

[3] T. Yamada, et. al., Phys. Rev. Lett., 105, 225002 (2010) .