大型ヘリカル装置で観測されるコア崩壊現象を引き起こす高nバルーニングモードの空間構造

大型ヘリカル装置ではSDC(super dense core)プラズマと呼ばれている高密度の放電では、連続したペレット入射を行うことで102121m-3を越える高い中心電子密度が達成されている。このタイプのオペレーションはヘリカル型の炉心プラズマとして魅力的な性質を備えているが、ペレット入射後(図1の茶ハッチ部の後)の中心β値の上昇はCDC(core density collapse)と呼ばれる大規模なMHD現象によって制限されている。

CDC_fig1 図1 CDCによって中心β値が制限された実験での、プラズマパラメータの時間変化。ペレット入射後に中心β値が上昇するが、3.18s付近で大きなイベントが起こって、中心からの軟X線放射が急減少し、周辺部のそれが急上昇することがわかる。

CDCの発現する領域から、ヘリカルプラズマ特有の高nバルーニングモードと呼ばれる不安定性がCDCの原因と考えられてきた。プラズマの弱磁場部を観測する開発した2次元X線アレイの計測(図2(C))と、CO2レーザーイメージング干渉計による観測(図2(A), (B))によれば、もっとも磁場曲率の悪い領域(横長断面部の大半径外側)に接続する、磁力線に沿ってきわめて狭い領域(図2(C):赤い縞部)に前置振動が局在していることが分かった。これはCDCが高nバルーニングモードによってトリガーされていることを強く示唆する。 CDC_fig2

図2 CDCの前置振動の観測例。(A) CO2レーザーイメージング干渉計の視線、(B)前置振動の揺動レベルの分布、(C)二次元軟X線検出器によって計測されたCDC直前の信号の変化とLHDの3次元モデルの上にカラーマップで示した仮想的なモード構造。

CDCは平均小半径ρ=0.8 付近の圧力勾配を制御することで制御可能であり、図3に示すように圧力分布がややブロードである低磁場の実験では中心β値が上昇して10%に達することが分かった。

CDC_fig3

図3 磁場の強度で正規化したプラズマ中心の圧力とその限界値。△印はバルーニング不安定性が生じて、圧力をそれ以上上昇させることができなかった実験点を示す。